特別講演① 演者:木之瀬 隆

演題:シーティング技術で摂食・咀嚼・嚥下の向上へ

副題:介護保険のシーティングでおいしく食べましょう!

抄録

シーティング技術とは、「発達障害児・者や障害者、高齢者が椅子・車椅子、又は座位保持装置を適切に活用し活動と参加への支援、発達の促進と二次障害の予防、介護者の負担を軽減すること」である。摂食・咀嚼・嚥下のシーティングはフレイル予防の栄養摂取から寝たきりによる誤嚥性肺炎まで広い範囲に関係する。口からの栄養摂取が難しい場合の寝たきり状態では、胃ろうなどの栄養摂取が行われているが廃用症候群や肺炎は大きな社会問題である。2021年4月より介護保険の介護報酬にシーティングが入り、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設について、介護報酬が算定できるようになった。高齢者ケアにおけるシーティングとは、「体幹機能や座位保持機能が低下した高齢者が、個々の望む活動や参加を実現し、自立を促すために、椅子や車椅子等に快適に座るための支援であり、その支援を通して、高齢者の尊厳ある自立した生活の保障を目指すもの」と定義されている。また、「椅子に座る」という暮らしの保障が記載されており、摂食において、安全性を確認した上で、座位姿勢での食事の摂取・管理を行う時代となった。関連する制度としては2017年に回復期リハビリテーションでシーティングが算定できるようになり、介護保険にも入ったことで医療機関から在宅までの座って食べるシーティングによる支援が可能になったといえる。シーティングでは食事姿勢は足底部分が床にしっかり着き、それから骨盤や体幹・頭部が支持され安定すると、摂食・咀嚼・嚥下運動が可能になる。特に噛むためには歯科医師の介入が重要で、基本座位姿勢に近い姿勢がとれると口からの栄養摂取がしやすく、おいしく食べることが可能になる。今回、シーティングの基本と介護保険における多職種連携を通して高齢者の事例を紹介する。

演者略歴

1982年 作業療法士 中央鉄道病院
1989年 東京都立医療技術短期大学 作業療法学科助手
1998年 東京都立保健科学大学 作業療法学科講師 
1991年 東京理科大学工学部電気工学科卒業 
1993年 日本大学大学院理工学研究科修了
2005年 首都大学東京 健康福祉学部 作業療法学科准教授   
2008年~2012年 日本医療科学大学 保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻教授 
2009年 NPO日本シーティング・コンサルタント協会理事長
2012年 株式会社シーティング研究所 代表取締役
2019年~一般財団法人日本車椅子シーティング財団 代表理事

特別講演② 演者:黒岩恭子先生・源間隆雄ST

源間隆雄ST 演題:口腔に触れる前に多「食」種ができる姿勢調整とその先にある食支援に向けた言語聴覚士の工夫

源間隆雄ST 抄録

言語聴覚士として日頃より食支援を実践していますが、口腔衛生、口腔機能と同じく食事姿勢は重要な要素の一つと考えています。私が考える食支援の4つのキーワードが口腔衛生・口腔機能、食事姿勢、食形態、栄養管理です。今回は食事姿勢をテーマに実際に現場で実践していることをお伝えします。
我が師である黒岩恭子先生より数多くの学びを得て現場で活用させていただいていますが、脳神経外科病院における急性期、回復期病院での姿勢調整方法の実際と姿勢調整をした後に食支援がより活発になるような工夫をお話させていただきます。
また、食べられる口づくりを実現するために歯科医師の先生方、歯科衛生士の皆様とどのように連携しているかの現状を口腔ケア・直接嚥下訓練時の姿勢のバリエーションの違いをお伝えし、その後、姿勢調整別に二症例を提示します。
一症例目は遷延性意識障害、長期臥床期間を経て離床が叶った患者の車椅子座位姿勢と食支援のアプローチの実践、二症例目は重度左片麻痺患者に対する完全側臥位法の実践です。
加藤塾の先生方の診療のお役に立てるよう精一杯努めます。当日は活発なご意見・ご質問をお願い申し上げます。

源間隆雄ST 略歴

平成13年3月 札幌医療福祉専門学校卒
平成13年4月 稚内禎心会病院入職
平成26年1月 札幌麻生脳神経外科病院入職
平成27年2月 日本言語聴覚士協会認定言語聴覚士(摂食嚥下領域)取得
平成28年4月 北海道言語聴覚士会 理事
平成28年10月 札幌麻生脳神経外科病院リハビリテーション科 主任
平成29年3月 日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士取得
平成30年10月 札幌麻生脳神経外科病院リハビリテーション科 科長
平成31年4月 日本口腔ケア学会評議員
日本口腔ケア学会言語聴覚士部会副委員長、医科歯科連携部会委員兼務
令和元年11月 回復期リハビリテーション病棟協会認定セラピストマネージャー取得
令和3年10月 リハビリテーション部言語聴覚療法科 科長

会員発表演題

下村隼人(香川県高松市 しもむら歯科医院)

「生活を支える医療を目指して 歯科が在宅医療を行う意義」

北村泉(鳥取県米子市 ライブアシスト)

「難病 多系統萎縮症の同僚と共に10年(食べ続けられる今 喋り続けられる今)」

金子貴紀(群馬県沼田市 利根歯科診療所)
勝見佐知子(利根中央病院 歯科衛生士)

「急性期病棟における口腔管理〜最期まで口から食べる支援を〜」

小菅一弘(秋田県雄勝郡 ジュネスデンタルクリニック)

「全身を包括的に捉えて最期まで食べられる口をつくる」

柏瀬昌史(柏瀬歯科医院)

「地域医療が求める黒岩メソッド」

藤原修志(和歌山県和歌山市 藤原歯科医院)

遷延性意識障害児にかかわって ~学校でみんなと一緒に給食を食べたいを叶えるために~